#12:揺れている!? 朝丘大介
突然、病棟が揺れた。
ヘルパーのゆかりがデイルームで、患者さんに食事を配っていたときだ。
震度4はあるだろうか。かなり大きな揺れだ。
ゆかりはその場で息を殺し、ただただ揺れがおさまるのを待った。
しばらくして、ようやく地震がおさまった。
ゆかりは、デイルームの片隅にいる車いすのおじいちゃんに目を向けた。
おじいちゃんはイヤホンを耳にしたまま、サッカーのテレビ中継に見入っている。
このおじいちゃんは、ふだんからケイレンがひどく、いつも小刻みに体が揺れているので、地震があったことに、まったく気づいていないのだった。

朝丘先生
この話は実話に基づいています。